プラントベース・ホールフーズ

動物性タンパクのコントロール

創造的な人生を歩む

アメリカのプラントベース(Plantbased)へのパラダイムシフト

チャイナ・スタディ

アメリカの高名な栄養学者コリン・キャンベル博士は、ある科学雑誌に掲載されたインドの科学論文に目をつけました。「ネズミの肝臓とタンパク質摂取」(1968年)に関する研究でした。
ネズミは二つのグループに分けられ、一つ目のグループはアフラトキシン(自然界において最も毒性の強いカビ毒。天然物の中で最も強い発がん性物質)が与えられた後、タンパク質20%を含む食事で育てられた。別のグループのネズミには同量のアフラトキシンが与えられた後、タンパク質の量をわずか5%にした食事が与えられました。
20%タンパク食のネズミはどれも皆、肝臓ガンかその前駆病を起こしましたが、5%タンパク食のネズミは一匹として、肝臓がんやその前駆病変にはなりませんでした。
その数値は取るに足りない違いではありませんでした。「100対0」です。
この研究との出会いをきっかけに、博士は「食生活とガンの関係」に焦点を定めました。
キャンベル博士が実験に用いたのは牛乳タンパクの「ガゼイン」。数百匹のネズミを使った大規模な研究を企画。異なった方法で生涯にわたる「ネズミの腫瘍形成」について調べたのでした。ネズミは一般的に2年ほど生きるので、研究期間は100週に及びました。
アフラトキシンが投与された後、通常レベルの20%タンパク食を与えられたネズミは、すべて肝腫瘍で死んだか、あるいは実験終了時の100週間時点で、肝臓ガンのため死にかけていました。
同量のアフラトキシンを与えた後、5%の低タンパク食で育てられたネズミは、すべて100週後の時点でも毛並みには光沢があり、活発に動き周り元気でした。
博士らは、ガン促進の可逆性について調べるため、同じ実験で何匹かのネズミの食事を40週目と60週目で入れ替えてみました。
高タンパクの食事から低タンパクの食事に替えたネズミは、高たんぱく食を与えられたネズミより、「腫瘍の成長」が極めて少なった。
一方、低タンパクの食事から高タンパクの食事に替えたネズミでは、その一生の半ばで「腫瘍の成長」が再開しました。
すなわち、栄養摂取による操作で、ガンの進行を「ON」にしたり、「OFF」にしたりすることが可能であるとが判明しました。
博士はインドの研究が正しいことを完璧に裏付けることになり、しかもそれは、反論の余地もないほど徹底した方法で行われたのでした。
牛乳のタンパク質は、アフラトキシン投与後のネズミに対し、極めて強力な発がん促進物質となります。
今までの研究では、栄養が「腫瘍の成長」に与える影響については、まったく見落とされていたことになります。博士らは魚タンパク、食事脂肪、カロテノイド類として知られる抗酸化物質などを含む異なった栄養素を使った研究も行いました。
栄養素は、ガンの促進をコントロールする上で、ガンを発生させる発がん物質の投与量よりもずっと重要であることを示し、動物性食品からの栄養は「腫瘍の成長」を増加させ、植物性食品は「腫瘍の成長」を減少させることを示していました。

キャンベル博士らは、ニューヨーク・タイムズ紙が「疫学研究のグランプリ」と評した、史上最大の疫学調査と言われる「チャイナ・プロジェクト」を行っています。
このプロジェクトでは中国農村部、および台湾における様々な病気と食習慣やライフスタイルについて調査したものでした。
中国農村地帯では、総カロリーの9から10%がタンパク質で占められ、そのうちわずか10%が動物食品からの摂取です。中国農村部では、動物性タンパク質摂取の平均は一日平均わずか7.1グラムでしかなく、アメリカ人の動物性タンパク質摂取の平均は、なんと一日平均70グラムにもなっています。
コレステロール値は、欧米諸国で「安全値」(150mg/dl)とみなされているレベルよりはるかに低く、平均127mg/dlで、コレステロール値がたとえ170mg/dl以下であっても、コレステロール値が低いということは病気に対して有利に働く(病気になりにくい)ということを文句なしに論証。
中国農村部では、心臓病やある種のガンは、稀な病気であり、アメリカ人男性の冠状動脈性心臓病(CHD)による死亡率は17倍も高かった。アメリカ人の乳ガンによる死亡率は中国農村部の5倍も高かった。
動物性タンパク質の摂取は、「悪玉コレステロール」の数値を上昇させることと関係し、植物性タンパク質の摂取は、「悪玉コレステロール」の数値を減少させることと関係していました。
また、脂肪摂取量が多いことは、血中コレステロール値が高いことと関係しており、この二つの要素は、女性ホルモン・レベルが高いことと共に、乳ガンが多いことや、早い初潮と関係しています。
中国農村部では、初潮は平均17歳であるのに対し、アメリカの平均はなんと、およそ11歳です。少女たちの急速な成長は、エストロゲンのような血中ホルモン・レベルも高くなり、乳ガンの高いリスクと関係しています。
中国人女性は、イギリス人(およびアメリカ人)女性が一生の間にさらされるエストロゲン量の、約35~40%分にしかさらされていません。動物性の多い食事をしていると、生殖可能年齢を9~10年延長させています。
「チャイナ・プロジェクト」は、食物繊維を豊富にとることは、直腸や結腸のガンの羅漢率が低いことときわめて深く関係していることを明らかにしました。ビタミンCやβカロテンの摂取量を記録し、血中のビタミンCやビタミンE、カロテノイドのレベルを測定することで評価しました。血中のビタミンCが低い家系ではガンの発生率が高くなるという傾向がありました。
ビタミンCなどは、サプリメントの形で取るのではなく、
「健康を勝ち取る秘訣は、個々の栄養素の中にあるのではなく、栄養が含まれているホールフード(Whole Food)、すなわち植物性食品全体(丸ごと)の中にある。例えば、ボウル一杯のホウレンソウのサラダには、食物繊維や抗酸化物質、そして、その他の栄養が無数に含まれている。この無数の栄養が私たちの体内で協力し合って作用する時、『健康』という驚くべきシンフォニーを奏でることになる」と、キャンベル博士は言っています。
中国人はアメリカ人よりも活発に体を動かしていること、中国人の低脂肪・低タンパクの食事は、カロリーを体脂肪にではなく体温に転換していること、この両方の理由から、中国人はアメリカ人以上にカロリー消費しています。
また、体格についても、より多くのタンパク質を摂取することは、より大きな体のサイズと関連していたのですが、この効果は、主に「植物性タンパク質」によって生じていることも、明らかになっています。動物性タンパク質と植物性タンパク質のいずれも効果があるがと。
このような証拠の一貫性が、関連事項のすべてに渡って幅広く見られることは、科学の研究分野では稀なことであり、「チャイナ・プロジェクト」のデータは、新しい世界観、新しいパラダイムを示しています。

博士は、1990年に肉を食べるのをやめており、その後の6~8年の期間に、特別なケースを除き、乳製品を含むほとんどすべての動物食品を食べるのをやめてしまっています。25歳の時よりも、今の方がずっと体調が良く、体重も30歳の時より45ポンド(20.4キロ)軽い。自分の身長からすれば、現在の体重は理想的なものであると言っています。


<参考文献リンク>
『チャイナ・スタディー 葬られた「第二のマクガバン報告」』 コリン・キャンベル
ドキュメンタリー映画『フォークス・オーバー・ナイブズ~いのちを救う食卓革命』

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